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土木の精度

これまではそう答えていました。
ところが最近のコンピュータ技術発展は、基礎数学を腕力でねじ伏せるまでの力を持つようになったのです。
それが製造業で導入されつつある3DCADです。
デジタルアイドルのセクシー&ビューティーRYOKOちゃんなどがもう少し身近な例でしょうか。数学的な方程式で表せない人体のような不定形の曲面についても、いまではコンピューターで処理できるようになっています。

製造業では携帯電話などのわけのわからないようなNURBS曲面は、3DCADでモデリングしたデータをそのまま製造でも使えるようにしているそうです。又聞きの又聞きですけど。土木でも今後スキャニングなどの精密な地形測量で3Dデータが入手できて、なおかつ3DCADシステムで設計すればより自動車産業などの製造業に近づいていけます。

1台の自動車を設計するのにかけられる費用と、1つの道路を測量設計するのにかけている費用。あながちオーダーの異なる話では無いはずです。

これはコンクリートの端数をチェックするという後ろ向きの話ではなく、二次製品の活用などの前向きの用途に使えるのではないでしょうか。

土木構造物の精度としては、鋼構造物がミリ単位、コンクリート構造物がセンチ単位、土構造が10センチ単位くらいでしょうか。

橋梁などの鋼構造物は高精度が要求されますから、早い時期にCADが導入されたのは納得がいきます。ただし道路改良などの土木現場でも基準点管理は従来からミリ単位の精度でした。線形構造物の1点がセンチ単位でずれているとよく目につくのです。結局肝心な測点はミリ単位で管理していますし、現場の道路中心点も1cmずれていることは少ないようです。

土木が一般に大雑把とされるのは実施図面が適当ということからでしょうか。実際土木工事では出来上がったものを測って最終図面としています。これはよく事務職員から問題点として指摘を受けています。

なぜ発注時に精密な図面が描けないのか。なんのための測量か。

この指摘には理論的な言い訳をしてきました。
地球(球体)に正確な展開図がないのに現場(曲面)に精密な展開図は無理という理由です。土木の線形構造物は球面ほどではありませんが、曲面形状です。ふつうは円柱、円錐などの近似でなんとかなる問題かもしれませんが、今度は体積を積分で求めるかということになります。四捨五入で消えてしまうようなコンクリートの端数を算出するためにメルカトル図法の研究に工費を注ぎ込むかということです。科学技術は発達したかも知れませんが、基礎数学はまだ球面の展開図を超えていないのです。

↑ 単純な構造物(流路工)の3Dモデリング事例