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建築と土木

一般に建設業の分野では建築が難しく、土木が簡単と見られています。たしかに、土やコンクリートを相手にする土建業が家造りの建築業より簡単で素人でも参入しやすいのは事実です。しかし簡単なものほど実は難しい。

以前雑誌で韓国企業が日本国内の建設業に参入しようとしたとき、建築部門から入ろうとすると読んだことがあります。土木部門では要求されるレベルが高く、まだ参入できる技術力ではないとのことでした。

じつは思い当たる節があります。
それは建築は実は組み立て産業で、土木は一種の製造業ではないかということです。

製造業の世界でもパソコンやテレビ、自動車などの組み立て工場は東南アジアに出ていってしまいましたが、ものづくりの部品産業の多くはまだ国内のようです。精度の項目でも書きましたが、土木構造物は普通の展開図では表現しづらい不定形の曲面構造物であり、これは自動車や携帯電話のフレームなどとおなじです。L型擁壁などのように市販の製品を組み立ててただけでできあがる土木工事というものは少なく、おおくは現場でひとつひとつ型枠をはめ込んでゆきます。
集水桝ひとつにしても買ってくるというわけにはいきません。

宮城谷さんの「奇貨居くべし」には古代中国に鄭国、李冰という水工の話が出てきます。技術者を蔑視する風潮のある中国において、史記にその姓が記されているということはそれだけ困難な仕事だという証でしょう。

たかが溝掘りでさえそれだけ難しいのです。

建築も、もちろん製造業です。しかし、在来工法の木造家屋でも現場では作業場で加工した部材を組み上げているわけで、現場だけをみると組み立て産業なのです。規格寸法が決められている部材をもちいるとさらに組み立ての比重が大きくなります。素人でもログハウスが建てられるのはそのためです。