CALS

計画経済

以前は社会主義こそが世界の未来像だと信じていた時期がありました。その思いはいまでも変わっていませんが、残った正式社会主義国が北朝鮮のみとなってしまうと、さすがに失望感はいなめません。

以前の社会主義には、計画経済というスローガンがありました。レーニン、スターリンの頃の5カ年計画などです。これは経済は市場ではなく官僚機構が一挙一動足を決めつけるという統制経済でした。日本でも石原完爾、岸信介らがそれを導入して55年体制をつくったと読んだことがあります。

必要な部品、施設を必要な時期に用意する。
過剰でも、不足でもなく、ジャストの数量とジャストの時期をきめる。計画経済とはもしかして来年の耕作に備えて必要な数の種子を保存しておく農耕が始まった頃から使ってきた技法かもしれません。

計画性はまた土木現場にも求められています。現場で余った生コンクリートには価値がありません。かえって産廃処分に費用がかかるくらいです。
必要数量分を注文し、ぴったり納期に調達する。
丼勘定でなく、精密な数量を算出する。
これにはやはりCADを筆頭とするコンピューターを使うのが便利ではないでしょうか。トヨタの看板方式も一種の計画経済ではないかともおもっていますが、これらトップ企業のシステムはコンピューターを前提にしています。

製造業ではCAD〜CAE〜CAMというコンカレントエンジニアリングの話を聞きます。設計〜材料〜生産までのすべてをコンピューターで管理することのようです。
土木でいうとCALSのことでしょうか。これは設計の段階で製品を決めつけてしまうということにつながります。

携帯電話や冷蔵庫など市場に出回る商品ならお客様が選べるので、製造業ではそれもよいでしょう。しかし土木の場合、現場で出来たものをあとからお客様がいらないからと撤去はできなのです。またその声の大きな人だけがお客様かという問題もあります。
ですから土木では設計段階で決まったものを施工段階で調整しているが現実です。

いつでも調整できる設計・施工。
当面コンピューター管理は難しそうです。

(レーニンの宿題)

ソ連の計画経済と企業のジャスト・イン・タイム・システムとでは前提条件が異なります。

国家の計画経済とは、閉鎖系における生命活動にたとえることが出来ます。宇宙船の中の生態系を考えてみると、完全に外部から遮断された状態では、酸素供給量、熱平衡、水循環、汚物処理などを常時一定範囲内に調整しなければなりません。すべてが管理された状態とならざるをえません。

これに反して、企業の場合は開放系の熱機関に相当します。燃料・空気は外部から持ち込み、発熱・排気ガスなど廃棄物は外部に放出する。

いざとなったらリストラと称して人まで放出できる開放系と最後まで国民の面倒を見なければならない閉鎖系とでは大きく前提条件が違います。

ちなみちソビエトなどの社会主義国の計画経済が機能しなくなったのは、上に書いたようなコンピューターの導入に失敗したためとは思っていません。未来への意志=目的を失ったことの方が大きいのではないでしょうか。

役所も人ごとではありません。
資本主義経済は明確な目的(金儲けの本能)がある分だけ社会主義よりパワーが続くのでしょう。