縮尺設定

【原寸図】

CADでは原則、原寸作図です。
原寸図とは「型紙」とか呼ばれる図面です。
土木ではナスカ絵のような地形を意味します。
もちろん建物図面や都市計画図のナスカ絵は広すぎて原寸図で表示もプリントも出来ません
出力用に適当に縮尺して表示やプリントすることとなります。
これが縮尺設定です。

この縮尺設定は「画面の拡大表示」と似ています。
原寸のCADデータを表示用に加工処理しているところが似ているのです。

地形地物はともかくとして図郭やテキストなどの図面情報は
ほんとうはどんなデータ構造になっているのでしょう。
文字についてはフォント情報があるので用紙なりの大きさにとどまっていますが、
図郭などはそのとおり、とてつもない大きさになっています。
一度図郭の図形属性を開いてみてください。
一辺が400mとかの四角形になっていると思います。

ナスカ絵が気持ち悪いというのでしたら、
図郭だけ別レイヤにして縮尺設定を変えれば普通の寸法がつかえますが、
一般に同一ファイルで異なった縮尺図を用いるのはあまりお勧めできません

【精度の問題】

特に平面図で問題になることですが、CADの図面はいわゆる紙の図面とはだいぶ違います。
CADの図面は、土木現場の場合は各種基準点や丁張用のデータベースに相当します。
機械系の場合ではそのまま振動特性解析(CAE)やNC工作機へのデータ利用になったりします。

これは便利なようで、実はCADオペレータにとっては重荷です。
つまりCADオペレータが直接、土地境界点(法務局登記)や道路中心座標、
構造物寸法を入力・管理してゆかなければならないからです。

紙の図面だと土地境界点を原図からトレースしたり、定規でプロットできていたのを、
CADでそのような程度の荒い作図をしてしまうと後が大変なことになります。
つまり、その荒いデータのまま現地に境界ピンを再現されてしまい、
はては現存境界石とピンとが15cmもずれてしまったなど困ったことになります。
こういった紙の図面ではなんでもなかったことが、CADの図面では問題となってくるのです。
CADは図面ではなく仮想構造物(モデル)とかんがえると
おいそれとデータをいじれないということがわかります。

こういうわけでどうしてもCADオペレータ(設計者)に負担がかかり、
これまでのトレースのように人任せにするわけにはいかない状況があります。

各種縮尺混合図

ひとつの図面に1/100、1/50、1/20などの異なる縮尺の構造図が描かれることがあります。
CADでも各レイヤーごとに異なる縮尺を割り振って、こういった図面を作ることは可能です。
「可能」と表現を控えたのは、すこし制限がかかるからです。

まずこの場合縮尺の異なるレイヤ間でスナップは利きません。
これは平面図をそのまま展開図などで部分表示の位置図として使おうという場合に問題になってきます。
施工区分を赤く色塗りするのにいちいち平面図レイヤ(1/500縮尺)に戻らなければならないからです。

もうひとつ、基準点の問題があります。
平面図と横断図を同じファイルにしても基準点はひとつのファイルにひとつしか設定できません。
平面と横断と図面が違うのだから原点が違ってあたりまえ、
どこが不自由かと思われるかもしれません。
でもCADでいう平面図とは座標管理図のことなのです。

原点を図面内にもつ横断図を考えてみてください。
この場合、座標値(1059.234、1084.847)の境界点をもつ平面図は
図面エリアの遙か北東方向に飛び抜けてしまっています。
単に位置図として平面表示する場合は、図面データ自体を縮小するか、
概略トレースするかのほうが紛らわしくないようです。