切り欠きコマンド

【基本図形を加工・変更する場合に使うカットコマンドです】

パソコンの削除コマンドといえばdeleteです。
削除といえば最近は取り消し(コマンド+Z)を頻繁に使うようになりました。
ここでいうカットコマンドとは図形の部分を切り欠く機能のことです。
削除コマンドというよりは分割コマンドです。

図形修正の「消しゴム系コマンド」には、このほかにも
消しゴムツール、ハサミツール、抜き取りコマンドなどがありますが、
切り欠きコマンドはそのなかでもベイシックなコマンドです。
路側擁壁に出入口の取り合わせ擁壁をつなげたり、
水路の途中に集水桝を新設したりする場合に用います。

CADでは、上に図形を重ねるて下の図形を表示させないという方法が紹介されることがありますが、
実際にその図形部分が消滅しているのであれば、
これら削除系コマンドで完全に消し去るか分割してしまう方が後々の間違いが少なくなります。
ただ、一回にひとつの図形ごとという制約があり、
いっぺんに複数図形の切り欠きができないのが残念です。

【上の図形が下の図形を切ります】

コマンドを実行する前に二つの図形を選択しておきます。
上の図形に面図形を用いると、型で切り取るかのように図形を分割することが出来ます。
このように任意の多角形や直線を切り取り用の台紙として使うことが出来る点が
このコマンドの優れた長所です。

添接板にボルト穴を開けるのにもこのコマンドを用います。
ボルト穴や窓の取り付けなどの場合、
切り欠きをしようがしまいが図面上は同じだとに思われるかもしれませんが、
切り欠き加工をしていないと面図形の表面に開口部の模様が描かれているだけで
実際には加工がなされていないまま残ることになります。
直接的には面積計算、ハッチングなどにミスが出ます。

CAD作図はどうしてもオブジェクト指向となりますので、
模様だけの製図はまちがいのもととなりやすいのです。

なお、切り欠きした部分は編集モード(2D変形)で移動・変形が可能ですので、
加工したからと言って固定されてしまうわけではありませんのでご心配なく。

【図形そのものを加工します】

CADの作図にはいくつか方法があります。
ここで紹介している福笑い流とはカードを配置する作図法です。
これにたいして切り欠きコマンドなど加工系操作は、
その名の通りカードを切り刻むコマンドです。
ではカードを切り刻まずに複雑な面図形を修正する方法があるのでしょうか。

VectorWorksには多角形を編集するコマンドがあります。
この多角形編集モード(2D編集)は、
それ自身が一種の作図空間といえるほどに柔軟な図形修正プログラムとなっています。
自分はふつうこの2D編集を使って面図形を編集しています。
このページで紹介していないのは、機能が多すぎて説明がめんどくさいからという理由もありますが、
なんの予備知識がなくても容易に操作が類推できるのでとくに説明の必要がないともいえます。
じつは切り欠きコマンドなどの加工系操作よりも、
この編集系操作を優先して使っているのには少しわけがあります。

CADでは現実の工事を作図しているので現場の施工を頭に入れてCAD上の作図をおこなっています。
この場合加工系は現場重視、編集系は工場重視ともみてとれます。
具体的に例えるなら、それは工場で加工した二次製品(集水桝)を現場に搬入するのか、
それとも現場着の二次製品(集水桝)を現地に合わせて加工するかのちがいです。
どちらの方法も間違ってはいませんが、自分は工場製品を主体に考えてきました。

反対の現地に合わせる方法をさきに説明します。
まずライブラリーからCADの標準の桝データを取り寄せます
それを平面図や横断図に張り付けます。
張り付けた集水桝の周りにはすでに接続する側溝が配置されています。
その現地にあるU型側溝の図形で標準集水桝図形を上からカットします。
3Dモデリングのブーリアン演算ではないので、
この切り欠きコマンドで完全な三面図が出来上がるわけではないのですが、
この切り欠き加工によって三面図を作図するための補助線が得られます。
ほぼこれで集水桝の図面を仕上げます。

これにたいして工場派は構造図からCADデータを生成します。
構造図に設計値から天端高や底高の補助線を作図してゆきます。
側溝の切り欠き部の作図には、
ほかの構造図や平面・横断図からデータをコピペして参考データとして使います。
最終的に完成した集水桝のデータ(平面・断面図形)を平面図や断面図にコピペします。
ぴったりと現地に一致しているはずです。

こうみるとどうも切り欠きコマンドの加工系操作のほうがより合理的な、
というかコンピュータにあった操作じゃないかと感じる方もいるかもしれません。
どちらでも良いのです。
でも切り欠きコマンドなどの加工操作性は
ともすれば設計の概念なしに現場あわせだけをやってしまいかねません。
なんとはなくではありますが、たかがカード(面図形)とはいえ
せっかく作ったモノをハサミでジョキリの切り欠きコマンドは、
どうも福笑い流には合わないようです。

ちなみに、このページで紹介している集水桝の作図は架空の作業例です。
自分のおもな作業方法は、構造図まわりにたくさんの基準点を配置して作図します。
もちろん切り欠きコマンドなどの加工ツールも使いますが、やはり基準点が主体になっています。