CADが紙の製図と異なる機能のひとつとして、作図の手順があります。
原寸作図(モデリング)の原則はここでも重要です。
CADの作図はものづくりと同じ手順で進みます。
これが土木の場合だと、公共事業の事業執行手順がそれにあたります。
ですからCADでの最初の作業は線を引くことではありません。
現物をつくるのですから、まずその準備からがCADの仕事です。
つまりCADの最初の作業は調査となります。
その次に測量、そして設計・計算へと続きます。
さて、「測量・設計」はともかくとして「調査」を作図するとは一体どういうことでしょうか。
【水系調査】
水系調査では地形や雨量データを元に流域面積や平均河川勾配などを算出し
各流出量の概算値を算出します。
このためには概略の地形データが必要です。
市販データとしては以下に説明するように国土地理院のデータが、
また公的機関のデータとしては各地方公共団体の航測地形図が利用できます。
だれでも入手可能なデータとして国土地理院の数値地図があります。
これには海岸線データや標高メッシュデータが納められており
日本地図センターからCD-ROMの形で一般に市販されています。
これらデータにはいくつかの形式があります。
CADでは「数値地図2500」や「数値地図10000」のデータ形式は
直接CD-ROMから取り込めるようになっておりますが、
中には「標高メッシュデータ」や「地図画像データ」など
必ずしもそのままではCADデータには移し込めないものもあります。
「標高メッシュデータ」は、地図ビューアMac版(10,000円)などの専用ソフトで
画像データやベクトルデータに変換してCADに取り込みます。
1/25,000の「地図画像データ」などはPhotoshopLEなどのレタッチソフトでデータ容量を落とし、
PICTなどのフォーマットに変換した上でCADに取り込みます。
CADでもビットマップのような画像データを参照することは出来ますが、
仕事として使うにはやはり画像をトレースしてCADデータ(ベクトル形式)に
変換した方がよいようです。
こうした地形図を利用して水系調査図をCADで作成することが最初の作業となります。
なお水系調査では近年植生・生態調査や地質調査も合わせて調べるようになってきました。
もちろんこれらの調査図もCADが担当する事になります。
生態系調査は各研究機関のデータを利用することになりますが、
地質関係は地質調査総合センターに数値地質図(CD-ROM)があります。
以下同様に登記簿調査、環境調査、土石流調査と続きます。
これら調査のなかには保安林区域図などの規制法令関係データもあります。
この法令関係調査もまたCADが担当しつつあります。
一般にはGISとよばれ電子政府によるCAD利用分野の一つとなっている行政サービスがそれです。
CADとは図面を描くことではなく、構造物まわりのモデル空間づくりや
関連データベースづくりがそのおもな仕事となりますので、
なにもデータが入力されていないのでは仕事に取りかかることすら出来ないのです。