直線

【データパレット】

起終点の絶対座標・相対座標・角度・延長などはデータパレットで調整します。
データパレットで延長を表示させたい場合は極座標を選択します。

幾何作図の精度】

CADでは表現の上で、線幅、破線種、線色、矢印の属性を持ち、これらは属性パレットで調整します。

小中学校で習った面積の計算方法は幾何作図の三斜面積計算でした。
山の高さを求めるのも幾何作図で教わりました。
いまでは座標計算しか受け付けてくれませんが、
以前は法務局の地積測量図も、この三斜面積計算でした。
また公共事業では掘削土量などのように
土工断面の計算ではいまだに三斜面積計算が基本とされています。

このように図面による幾何作図は重要な数値・数量の計算方法だったのですが、
いまはほとんど代数計算に変わっています。
幾何作図では端数が曖昧になるからです。

では幾何作図は代数に劣るのでしょうか。
いえそうではありません。
幾何作図法と代数法は等価です。

図面による幾何作図法の精度が劣るのは、その定義を曲げて使っているからにほかなりません。
点とは大きさをもたないはずなのに鉛筆やインクで描かれています。
線とは幅を持たないはずなのに線幅があります。
本来点とか線とかは目に見えてはいけないものなのです。
この点がCADと図面の作図法の違いになります。

CAD作図でも点や線は目に見えています。
しかしそれはあくまで表現上のことです。
直線がLINE(X1,Y1,X2,Y2)など数式で表されるのように
CADデータ自体には線幅は含まれていません。
ただ起点と終点座標が記載されているに過ぎません。
ディスプレイや出力図面で黒線とみえているものは
そのデータを加工・翻訳した結果なのです。

CADではあくまで座標値で計算・描画しているので、
幾何操作の皮を被った代数計算という見方もできます。

「拡大時に線の太さを表示」に環境設定して直線を拡大してみてください。
直線の端はくさび状になっているのがわかります。
さらに拡大すると画面が直線で真っ黒になります。
しかしたとえ画面が真っ黒になろうと、起終点は常に点で表されていることに注意してください。
線とは長さがあって幅のないもの。
この数学定義が忠実に守られているのです。
精度の桁数でいうとCADはExcelなどの表計算ソフトや
ポケコン、電卓などと同程度かそれ以上の能力があります。

原則としては幾何作図で十分代数計算の精度が得られるはずです。
スナップミスなどのエラーだとか、計算書の出力だとかの問題点は残っていますが、
ほかでも説明しているように作図原理においてもCADは図面の幾何作図とは全く別物なのです。

工学の道具であるCADに、ここまで学問(幾何学)の概念・定義にこだわるのには理由があります
CADのシステムではコンピュータがほとんど事柄の管理をします。
管理には境界点・中心線・断面積・体積など厳密な数学特性を持つ事柄を相手にします。
具体的には登記上の境界点管理とか下水道流量とか造成土量とかです。

官民の境界線を考えてみてください。
1ミリの線幅でも100mで0.1F。
道路の場合だと100kmで100Fです。
へたに直線に幅を持たれては困るのです。
製図では何でもなかった線幅や丸点の大きさが、
原寸作図のCADでは問題になってくるのです。

【線から面図形そしてモデリングへ】

じつは原寸作図(現物製作)の考えを推し進めると、
直線ツールの使い道は官民境界や中心線など、ごく限られたものになってくることがわかります。
現実の物象はすべて量(広さや重さ)をもつので、みんな立体表現となってしまうのです。
CADというか、土木工事そのものが3Dの仕事です。

例えばふつう配筋図などは直線ツールで描きますが、
より正確には丸鋼だと幅16ミリのダブルライン(多角形)ツール、
異形鉄筋だと節やリブを曲線ツールで描かねばなりません。

これは別に極端な話ではなく、斜角のきつい床版橋のような、それこそ鉄筋だらけの構造物では、
このように鉄筋径や曲げ半径を考慮して作図しないとカブリやピッチが守れません。
鉄筋を線と思って作図してしまうと
ほとんど20ミリ径の骨材の入る隙間もないほど鉄筋だらけの設計になってしまうのです。

これまではそんな紙の図面でも、専門の鉄筋屋さんが加工寸法を調整しておさめていました。
最終には現場でむりやりピッチを調整することもあります。
でも、これら現場の手助け無しにCADのなかだけで解決しようとすると
どうしてもかなり厳密に学問(数学)の定義にこだわらざるを得ないのです。

【属性】

はじめてCAD出力平面図を使った方は、その模様のような表現にとまどったかとおもいます。
紙の図面として出力する場合には、CADの無機質な表現を補うためにいくつかの工夫が必要です。
そのとき塗り潰しなどの簡単な面処理で工夫してしまうと
図面というよりイラストのような軽い印象となってしまいます。
実務に使う図面としては線による表現が重要です。

まずは線幅です。
線の太さが5種類ありますが、自分としては極細、細線、太線の3種類くらいを使っています。
識別度といしては幅が2倍くらいでしょうか。

次は破線です。
破線は図面表現としてよく使われてきた識別方法ですが、
今ではほかにカラーやグレー表現もありCADではあまり多くの破線は使いません。
ひとつには終点まで線が届いていないという表示上の欠陥があるからです
破線は起点と終点がおなじ線分で収まらなければならないのですが、
CADでは破線の寸法を正確に決めているので終点が線表示が合わないことがあるのです。

またCADは破線自体にも線の顔に表情ががありません。
線の表情などというと、技術者は画家ではない、とおしかりを受けそうですが、
手書き図面を主体とする以上、イラストレーターなみの表現力をふつうの製図者はもっています。
図面とは、情報をやりとりする媒体なのですから、
自然とその線にも情報がにじんでくることになるのです。

ただ、手書きの破線は、どうしても直線の数倍の手間がかかります。
つまりそれだけ破線に表情を持たせていることになるのです。
これがCADだと直線も破線も手間は同じです。
同じ手間ということはそう明確な識別も期待できないということです。

最近線のグレー表現を使うようになりました。
地形線・寸法線など補助的な線をグレーに表示します。
人はどれだれ線のグレー度を識別できるのかは不明ですが、
数%単位で変化させてもあまり意味はないようですので自分は1種類しか使っていません。
やく70%グレーです。

線に色を使う場合はすこし注意が必要です。
これは絵画でもそうですが、いちど図面で色を使うと、
たとえそれがほんのシミのような赤点であっても一瞬にして図面の印象が変わります。
グレー使いではあまりそれが気になりません。
これは人間の脳の識別によるものなのす。
できれば使いたくないのですが、黒い図面に朱色で書き込むのは
古代の平面図(配置図)から使われてきた技法です。
見るほうが慣れてしまえばどうということはないのかもしれません。

線としての色はできるだけ濃い色を使います。
これが面となると逆で、できるだけ薄い色を使うことになります。