polygon多角形

【基本図形】

多角形と似た面図形に四角形、円、円弧、曲線などがあります。
これらは名前のとおりそれぞれ幾何学の定義どおりに描画されるわけですが、
これら単純図形はすべて多角形で作れます。
つまり単純図形を内包しているのです。

四角形では長方形にしか変形できませんが、
多角形で四角形を作ると台形や平行四辺形や四辺形に変形できます。
逆にいうと、四角形や円などの面図形は多角形に
ある規制を加えたモノと見ることが出来ます。
どちらにしろ土木では四角や円というような単純な図形を取り扱うことはありませんので
とくに覚えておく必要はありません。
四角形を使うのは基礎砕石断面くらいです。

【3Dモデリング】INPAKU・・・大成建設パビリオン 「古代文明都市ヴァーチャルトリップ」

原寸作図→現物製作という考え方を進めると、
作図は線から面に、そして面(2D)から立体(3D)へと移行せざるを得ません。
自動車や携帯電話などの製造業ではすでに2Dから3DへCADが移ったとききます。
土木も本来3DCADを使うべきなのでしょうが、その移行はなかなか現実化しないでしょう。
土木は規則・法律で図面管理が規定されているという問題もありますし、
対象図形が案外不定形ということもあります。
が、3D移行に一番の障害となるのは、
製造業は大量生産なのに対し、土木は一品生産という特性です。

製造業だと、仮にバリエーションがあるにしろ基本的に一社でひとつの製品をつくります。
ひとつの製品ですから3Dモデリングにどれだけ時間をかけようが経費にはそんなに響きません。
こういった場合ひとつのことに専念するのですから、
企業とはいっても、ある意味大学の研究機関のようなものです。

それに対し土建業で個々の問題を取り扱います。
この点で、土木工学は製造業やお隣の建築業ともかなり性格が異なります。
はっきり申し上げましょう。
土木は政治です。

土木行政の側に立って事業にあたるとはっきりとそれを実感できます。
モノを作っているというよりほとんど身の上相談所です。
市町村ごと、地域ごと、住民ごと、職種ごと、いや世代ごとに違った設計を要求されます。
路線計画におけるコントロールポイントなどは、まさしく政治そのものです。
このためひとつひとつ3Dモデリングなんぞやってられないというのが現場の実情でしょう。

土建業でもVS側溝や植生ブロックなどの二次製品の利用分野では3Dモデリングも可能ですが、
その手法で施工区域の3Dモデリングを順次積み上げてゆくというようには、
ものごとは進まないように感じます。

そういった理由で、ここではより柔軟な面(多角形)による設計を紹介してゆこうとおもいます。
直線からは1次元増えて、3Dからは1次元減った形の折衷案ですが、
用紙自体が2Dなので割とリーズナブルな経費に収まるはずです。
なお、この場合の基本は平面図(鉛直方向の投影図)となります。

【グループとの違い】

面図形とはもともとMacintoshのOSレベルでの図形特性です。
イラストソフトを使ってきた人にはあたりまえの概念ですが、
線で製図してきた人にとってはすこしわかりにくいかもしれません。
まず面図形と直線のグループとはどこが違っているのかを説明します。

定義はいいかげんですが、面図形は面属性(面積など)を持つもの、
線グループは線属性(長さ)を持つものと考えてください。

よく引き合いに出される例としては、
面図形はカードのように背後の図形を隠す機能があるという特性があります。
平面図を展開図の位置図として右隅に配置する際に、
余計な周辺地形を中空の多角形で隠してしまう手法などです。
これなどはレイヤーの概念と共に、
CADが2D+鉛直レイヤの疑似3D構造をもっていることの現れです。

これなどが、カードで図面を配置するのと、針金で線を配置するのとの違いです。
なら「針金の線」のほうが使いやすいじゃないか、とおもわれるひとも多いでしょう。
CADの場合、面図形を編集するときにはカードから針金に性質かわりますので
カードと針金では、作図上の違いはそんなにありません。
やはり違いが大きいのは面属性などの図面表現とか、
モデリングの一部としての幾何学上の概念などです。

オブジェクト指向はCADデータそのものに数量とか規格とか番号とかの属性を付け加えますので、
図形がモノとして扱えることを要求します。
つまりいくつかの直線をグループにまとめただけの線グループはオブジェクト指向にそぐわないのです。
具体的には色塗りやハッチングが使えませんし、面積も算出されません。

実際の製図でも、図形を直線のグループで描くか、多角形で描くか悩むところですが、
どちらでもよいのなら多角形とすべきです。
直線ツールだと融通が利くのは確かですが、
直線で可能で多角形ツールの編集モードで出来ない操作はありません。
節点をエリアで選んでまとめて移動する操作や、
節点を円曲線に変換する操作など多角形の編集操作の方が優れています。
時として白塗り、塗無しや環閉合など余計な機能だと感じることもありますが、
部分的に使い分けるより多角形に統一したほうがよいとおもいます。

面図形を使わないのは、逆にオブジェクト指向がうっとうしい場合です。
なんでもかんでも図形に属性を持たせなければならないというのは、
なんでもかんでも設計者に設計・施工責任が背負わされるということにほかなりません。

なお、目地や天端面など装飾的な線分は直線で描きます。
主要構造物でなければ線で結構です。

【面属性】

面図形ではかならず面積が表示されます。
ですから線分が繋がっただけの折れ線は多角形ではありません。

折れ線を多角形でつくることは可能です。
この場合は最後の閉合線を非表示にします。
つまり多角形の一部を消して折れ線を表現するわけです。
ただし、これはあくまで表現上だけのことですから、図形は意味のない面積をもっていますし、
折れ線図形を色塗りすることもできてしまいます。

多角形データパレットには「多角形を閉じる」という設定項目があり、
また面属性の「塗潰しなし」などの設定もあって、このへんの調整が可能となっていますが、
おおもとはやはり面図形です。
正確な折れ線にはやはり線をグループ化したものを使うのが良いでしょう。

このように面図形では、クリックエリアが広いという特性があります。
したがって画面上見えてないだけで非表示したはずの部分をクリックすれば
図形をピックアップされてしまうというトラブルも起こります。
この非表示部分のピックアップは、円弧などでやっかいな選択ミスを引き起こす原因にもなります。
こんなところが面図形の概念がMacOS以外で広まらない原因かもしれません。

【カード(部品)の意味】

面属性は、2次元平面という貼り絵やトランプカードのような概念です。
一枚一枚のカード(図形)を組立用の部品として扱います。
表題では「福笑い流」と称しています。

このような面の作図はおもにイラストソフトで使われていた機能ですので、
線を引いて製図してきた設計者には違和感があるかもしれません。
わざわざ面図形にしなくても直線グループで十分だという考えもあるでしょう。
面図形だと、なんとなくいい加減、信頼性の低い印象を与えているのかもしれません。

たしかに物体から面、面から線、線から点へと図形が単純化すればするほど
精度や信頼性が増すのは事実です。
しかし、いまのパソコンは3Dモデリングでさえナノレベルの精度になっており、
精度面での優劣はなくなっています。
信頼性も重要な要素ですが、CAD上では基準点や境界線などがおおく配置されており、
より単純情報との比較・整合も問題ありません。

直線による製図はトレーサーのよう設計者にとっては簡単手軽かもしれませんが、
設計検討・数量計算という観点からは不十分な方法だと思います。
CAD情報をカードのような部品として管理する方法は、
設計者におおきな負荷や責任がかかりますが、そのぶん工程全体が簡素化でてきて合理的です。

【将棋の駒】

土木事業における設計とはあるいみ戦略の要素があります。
たとえば路線決定はストラテジーとよばれる戦略のようなものです。
地域利害と政治力と財政と世論と、はたまた闇の力までをもまきこむバトルのなかで決まります。
ものづくりというよりは一種の戦争の様相さえします。

このようないろいろな利害関係・力関係・予算を平面上で検討し、
勝利を得るためにうまれたのが作戦本部の戦略シミュレーションです。
軍人将棋のようなモノです。
なんか戦略というとキナ臭い感じがしますが、
日本の場合に戦略といえば「雑誌プレジデント」のようにビジネスの分野でよく見かけます。
かえって軍事専門家の間では昔も今も戦略分野は人気がありません。
たぶん軍人に物資調達(ビジネス)戦略は理解できないのだと思います。
戦略とは明確な政治目的があってはじめて扱える道具だからです。

この戦略シミュレーションでは地図や海図に
部隊や戦艦のコマ(カード)を配置していろいろな検討を行います。
これが土木の地域開発や出店計画のシミュレーションと同じなのです。

また土木工事現場の工事用車両通行量シミュレーションにもつかえるでしょう。
カード型設計では、この戦略シミュレーションにも対応します。
路線を曲線(多角形)で作図していれば、路線図の線形変更は編集モードで変えられますし、
構造図の変更も個々のシンボルの入れ替えだけで対応できます。
もとはといえば設計自体がこういった戦略シミュレーションの繰り返しなのです。

【おもちゃのCAD】

このページではVectorWorksの機能を紹介していますが、
面図形の項目でもわかるように、いまの土木系のCADとはおおきく違っています。
図面(線)とオブジェクト(面)との違いです。
では線のCADと面のCADどちらが優れているのでしょう。
これは既に市場シェアが決定を下しています。
線のCADが実用向きのCADです。

Mac系の表現力重視のCADは、周辺ソフトとしてはともかく、業務用基幹ソフトとしては失格です。
とくに大規模プロジェクトになるにつれその傾向が増します。
具体的にはスクロールのスピードです。
イントロでもお話ししたように土木設計では業務の背景に大きなシステムがあって、
単なる汎用CADではとても対応できません。
そういった業務用ソフトから見るとMacのVectorWorksのように
チャラチャラしたCADはオモチャなのかもしれません。

とするとこのページは意味がないのでしょうか。
わたしはこれからは公共事業とは別な目的で土木CADを使う人々が現れる
とみてこのページを作りました。
世の中がかわるかわるといいますが、おなじく土木も変わるはずです。

一般に世間では土木建設は終わりのような風潮がマスコミであおられていますが、
わたしはこれからさき土木の仕事が縮小しつづけるとは考えていません。
一時的には事業量(GDPに占める割合)は減るでしょう。
ゼネコンさんや中小土建屋さんも騒がれているようにつぶるところが増えてくるでしょう。
しかし今後土木の仕事に関わる人々は逆に増えてくると予想しています。
政府や役所などの専門業者より、
消費者や利用者にちかい土木のお仕事が増えてくるのではないでしょうか。

漁船が減って釣り人が増えるように、専業農家が減って家庭菜園が増えてくるように、
ゼネコンが減ってアマチュア土建が増えてくる。
それが官から民、供給者から消費者のながれではないでしょうか。
街はエクステリア、村はガーデニング、これがこれからの土木のキーワードではないかと考えています。

そういうアマチュア土建にとって、
これまでのようなひたいにしわを寄せて使わねばならないような本格業務CADは不向きです。
仕事で嫌々使わされるCADではないのですからもっと簡単で、楽しく、手頃なCADが必要です。

仕事とプライベートは違います。
どんなに優れた性能であろうと仕事のトラックを行楽のキャンプに使ったりはしません。
同じ機能なら市販車のランドクルーザを行楽には使います。
しかし遊びのランドクルーザーは、機能としては業務用トラック・ジープにかないません。
たとえトヨタやホンダであろうと仕事に使えないクルマはオモチャです。

さきほどMacのCADはオモチャだといいましたが、オモチャが悪いととはいってません。
おなじ機能なら楽しく簡単に使えるおもちゃのCADのほうが人気が高いのは当然です。
ちまたの書店でVectorWorksの参考書が多いのは、ホンダやソニーの関連雑誌がおおいのとおなじです。
かならずしもVectorWorksがアマチュア用(とくに価格面で)というわけではありませんが、
現在もっとも人気の高いCADではあります。
本格CADなど、仕事だから仕方なしに使っているだけです。
趣味に使うCADが、こういった効率性一辺倒の無味乾燥なCADでは困ります。
アマチュアがログハウスを建てる際に、楽しみながら使えるようなCADが現れてほしいものです。