いきさつマニュアル育ち面の作図多機能精度と信頼性データ互換

使用するCADの紹介・・・Minicad(現VectorWorks)

■ CAD参考書

カツオ船基地だけが取り柄のさびれた漁村の、ある地方のちいさな書店
そこのパソコン棚に新刊のVectoWorksの参考書が5冊積んでありました。
驚きました。
もちろん都会の書店ではさらにたくさん置いてあります。
そういえばどこの書店のCADコーナーでも「VectorWorks」はよく見かけます。
きっとみなさんのお近くの書店にも置いてあります。
Minicadの時代からそうでした。
もしてして、日本で一番有名なCADソフトなのでしょうか。
でもそれって不思議なことなのです。

じつはVectorWorks(Minicad)のシェアはとても低い(CAD&CGによると1%程)のです。
自分の関係する土木の分野をみまわしてみても普及率の1%は妥当なとこでしょう。
まだ自分以外VectorWorksを使っている例を知りませんから。
業界シェアと参考書、まるでちぐはぐです。

また、シェアNo.2のAutoCadについてもおかしなことがあります。
さすがにAutoCadともなるとCALSやGISなど関係上、大手のコンサルのいくつかは導入していますし
私の以前いた事務所も導入をしていました。
でも普及してるといえるでしょうか。
シェアNo.2は導入率のことです。必ずしも
普及率・利用率とは一致しません。
自分の知る限りでは、AutoCad本体だけでは難しすぎて実際に使っている設計者はごく限られていたようです。
実質は、業務専門ソフト会社のアドインソフトでやっと使ってる状況でした。
結局土木コンサルタントでは測量関係ソフトベンダーのCAD部門(業務専用ソフト)が
そして中小の土建業者ではJW_CADがもっとも普及しているようです。

ではなぜ書店にはAutoCadとVectorWorksが所狭しと並んでいるのでしょう
なぜ業界CADの参考書が書店に全く並ばないのでしょう
そこにはクローズドな商売とオープンな商売、業務専用ソフトと汎用ソフト、規制と自由の違いがあります。

土木関係の業務はおもに法律によって執行される上意下達の計画経済システムです。
「法律で執行する」を甘くみないでください
それは規則以外のことはすべて不正・違法行為として摘発されうることを意味しているからです。
これらは規則でおこなう仕事ですから、その規則に則ったソフトと
その規則の訂正に柔軟に対応できるサポート体制が重要です。

私はAutoCadに代表される汎用CADが特に難しいとは思いません。(よくは使えませんでしたが)
でも業務専用ソフトを使うとより流れ作業で測量設計が出来るのです。
しかも法律や規則、JIS規格など危険な部分は中央のベンダーにおまかせで。
専用ソフトを使うと危険な法律の執行業務が安心できて、しかも楽ちんです。
※大きな声では言えませんが、天災(洪水)より人災(摘発)で多くの犠牲者が出ています。
CADで設計しなくてもオペレータとして入力作業をするだけでよいのです。
しかも設計には合法のお墨付きも得られる。
ソフトの善し悪しではないのです。

こうしてみると、閉鎖市場を席巻している専用ソフトが、いかに法に正しく、いかに効率的で
そして全然つまらないかということがわかります。
VectorWorksの参考書は人気がある(使ってみたい)から書店に並び
法にそっぽを向いてる(自由だ)から仕事に使いづらいのです。

とはいえ、そんなかっこええことばかりでもありません。
高いというのもあります、もちろん。
誰も使ってやしないじゃないか(JW_CADユーザ)、というのもあります。
訳がわかんないくらい高機能だぞ、という善し悪しの分からない批判もあります。
とにかく変わったヤツなのです。

■ いきさつ もどる

Minicadは確かヴァージョン4から使っています。
パンフレットの造成平面図は当時からカラフルだったことを覚えています。
MACでは、そのころClarisCadが撤退していたので、
Minicadはほとんど唯一の選択肢でした。
その頃MACがPowerPCに移行したのと同時に、MinicadV5のヴァージョンアップで
大分処理が速くなって助かった記憶があります。

その後いくつかヴァージョンアップがありましたが、機能としてはあまり役に立っていません。
なかなか自分に都合の良いヴァージョンアップはないものです。
結局このCADは当初から完成していたということでしょうか。
今はヴァージョンアップの期間が2年以上になっているのでほっと一息ついている状態です。

精度向上はV9で実現しましたので、より広域的なGISでの利用の道も開けたかと思います。
現時点でこのCADに望むことは、EXCEL、FileMakerとの連携くらいです。
そのほか自分としてはVectoreScriptを使えるようになったらとは考えています。

■ マニュアル育ち もどる

まともに実施図面が出来るのに半年くらいもかかっています。
これは製図自体も一緒に勉強し直したからという事情もあります。
1年ほどしてある程度図面が描けるようになってからA&A社のCAD講習を受講しました。
それまでの作図法の確認が主でしたが、あらたに平行複製コマンドという便利な機能も教わりました。
(※平行複製コマンドでは曲線が多角形に変換されるという問題があるのでそれまで使うのを敬遠していたが、使ってみると結構便利)

このCAD教室では、あらためてマニュアルの威力を実感しました。
特に教えてもらわなくてもマニュアルだけあれば効果的な修得が
可能だということがわかったからです。
書店にはVectorWorks(小さな市場シェアにそぐわない)の参考書が並べられていますが、
そのどれもマニュアルにはかなわないとおもいます。

■ 面の作図 もどる

製図をDrawingというように、ふつう作図とは線を引くことを意味していますが、
VectoWorksの場合、おもに面を作っていゆく感覚で作図します。
VectoWorks(またはイラストソフト一般)では連続線と呼ばれるものは
多角形という二次元の面を意味しており、一次元の線のつながったものではありません。
これは便利な反面ときとして図形選択などで勘違いのもとになります。
線形図などをコマンド+Aですべてを選択してみると、作図エリアの外まで図形範囲がはみ出ていることがあります。
円弧の中心点です。
VectorWorksでは円弧という線はなく、円弧と見えたのは扇面の一部だったのです。

オブジェクト指向という言葉があります。
VectorWorksを使っていてこれがそういうことなのかと感じることがあります。
ジグゾーパズルのように部品をはめてゆく感覚です。

例を挙げてみましょう。
U型側溝を作図します。
まず天端の横線を引きます。
線を引くのはこの1回だけです。
あとはこの横線を(Ctrl+ドラッグ)で複製コピーしてゆき。
回転などのデータ修正で次々と線を組み立ててゆきます。
もしくは基準点→多角形でトレースという手法もあります。
U型側溝が仕上がれば多角形で絵取ってシンボルとします。
つぎはこのシンボルを横断図にはめ込んでゆくわけです。
直線を移動するときは棒のように、変形するときはゴムのように扱う。

こうしてみると線を引くという操作が例外的な操作であるとわかります。
ほとんどが図形のドラッグとデータ修正です。
Drawinig(引く)からAssembling(組立)に。
人によって作図法が違うでしょうが、オブジェクト指向というのは
こういうことではないかと勝手に解釈しております。

■ 多機能 もどる

VectoWorksは汎用CADをうたっていますが、主に建築用に開発されているため
土木には不要なコマンドがあります。
自分が主に使うのは文字列、基準点、直線、多角形、回転、対象複製コマンド
などでしょうか。
土木用には多機能すぎるというのが自分の印象です。

その他シンボル、グリッドシステム、多角形変形コマンド、ダブルライン、
フィレット加工、結合・削除加工、複製配列、図形選択、画面登録
・・・をその状況に応じて使い分けています。
使うつもりがなければとくに使わなくても支障はありません。

クラスの機能は現在非表示クラスとしてゴミ箱用ぐらいにしか使えていませんが、
レイヤが複雑になった場合の計画線や色塗り図形の分類に使ったりもしています。
他のCADとのデータ交換にとDXFファイルを読み込んだ場合
DXFのレイヤがクラスに変わっているので、それはそれで意味があるのかなと感じています。

ファイル共有、データベース、アニメーションなどはまったく使えていません。

3Dは直接は業務とは関係ありませんが、これは自分自身の課題なので出来るだけ使うように努力しています。

以前3,000点の測量点をミニパスカルを使ってCADに読み込んだことがあります。
測点番号まで変換するようにしたので、プログラミングに疎い自分としては
excelをつかって力づくで解決せざるを得ませんでした。
プログラム(VectorScript)が使えれば標準化できたのにと残念に思います。
VectorScriptがいまひとつ自分のシステム上での調子が良くないのも問題です。
それも含めて一度本格的に講習を受けなくてはと考えています。

以上、機能面でこのCADだけの特徴というものはないとおもいます。
なんとなく使えるのが売りかもしれませんが、それでも最近はすこし食傷気味です。
このCADでは読みやすいマニュアルが一番でしょうか。

■ 精度と信頼性 もどる

コンピューターでは1÷3にまた3をかけても1にもどらないということを
(場合によっては1÷2+0.5が1にならないことがあるとも聞きます)
CADを使っていても感じることがあります

単純に自分のスナップミス(結線誤差)の場合もあるでしょうが、
以前は(特に円曲線を伴う法線座標について)電卓orExcel計算値と
CAD作図どでポイント座標が数@違ったりする事がありました。
「パス複製」で中心杭を配置しようというのですから、
かなり大胆な作図をやったものですが、ともかくそのときはそんなもんか
とおもって特に気にもしていませんでした。

でもいまのV9は16桁精度になってるということです
これからもう不整合をCADのせいにはできなくなってしまいました。
今度2mmも不整合があれば、あとの原因追及が大変です。
2mmくらいの誤差はどうということはないのですが、
計算値と作図値の数値が一致していないということが問題なのです。
もっともV9ではまだそういうことはありませんが。

これまでも面積の算出(いつも)や体積の検算(たまに)にMinicadの数値を使ってきました。
時にデータパレットの数値がわずか異なることがありましたが、
大概は図形のスナップミスか電卓計算違いという自分のミスでした。
内部の計算方法がどうなっているのかはわかりませんが、
VectorWorksによる作図法でも大概は大丈夫のようです。
有効数字6桁程度は十分信頼しています。

■ データ互換 もどる

VectorWorksは主に建築関係を対象としたCADソフトだそうです。
上にも書きましたが、自分の周りの土木関係でVectorworksを使っている例をしりません。
唯一、プリントセンターなどでVectorWorksを扱っているところがあるくらいです。
データ交換には中間ファイルDXFを使うことになります。
これまで測量屋さんのAUTOCADとのデータ交換はdxfで行ってきましたが、
線図形と面図形の違いや、テキストの取り扱いの違いなどから、
おおむねトレースし直す場合がほとんどでした。
とはいえ平面図の地形図部分を除けば、トレースといってもとくに苦にはなっていません。
あまりにシェアが低いにもどうかと思いますが、もともとほかのCADにも
互換性を売り物に出来るようなソフトは見当たりませんので特に気にはしていません。
つまりJW_CADとAutoCad以外ならどれも似たり寄ったりなのです。
VectorWorksの方も互換性に努力はしているようですが、
なにせ自分自身が高機能な(お高く止まっている)のですから相手に合わせようがありません。
ワークシート、画面登録、貼付画像フォーマット、クラス、それに面情報・・・。
Mac、Winを問わず××.mcdフォーマットの読み込みに対応したCADソフトが
存在しないということがそれを物語っています。
孤高というか、ひとりぼっちというか。
どっかちがう国のソフトのようです。
(いまではドイツの会社になってます)