WYSIWYG

【MacintoshのDTP用語】

What you see is what you getの略語です。
ディスプレイで見たとおりにプリント出力されることをいいます。
主にMac環境のDTP出力の際の概念です。

いまでは当たり前ですが、昔はプリントアウトとディスプレイは別物でした。
たとえばポケコンの座標計算です。
画面上は数式や座標値しか表示されていないのに、印刷では路線網図が出力されるます。

CADは原寸作図なので、ソフトによってはディスプレイとプリント出力が
かけ離れている場合もありますが、最近のOSはどれもGUIを装備していますので
概ねWYSIWYGに準拠する格好になっています。
最低でもプリント前にドライバのプレビュー画面が表示できるようになってるはずです。

macintoshはいまでこそthink differentなどと異能者のためのパソコンというふうに
変わってきましたが、もとは機械(コンピュータ)嫌いのためのパソコンとして登場したので
初心者向きなのです。
画面に表示されたとおりに印刷されるということは、
逆に言うと印刷するように画面表示しなければならないということです。
つまりディスプレイ画面は白地に黒となり、黒字に白のCADとは一線を画することになります。
地形図での等高線の主曲線、計曲線、補助曲線など
ディスプレイ上で線幅を区分するのもWYSIWYG機能のひとつです。
さらに本質的には、色データをRGB(発光体)形式とするのか
CMYK(色吸収体)形式とするかの大きな問題があります。
MacのCADは結構苦労しているのです。

WYSIWYGの特徴はMacのヒューマンインターフェースにあります。

【狭義のWYSIWYG】

DTPでは見えるように出力されるという意味でWYSIWYGということばを使っています。

VectorWorksでいえば環境設定で「拡大時に線の太さを表示」にセットしておくことで
印刷と同じようにディスプレイが表示できるという機能がWYSIWYGにあたります。
これで擁壁の輪郭線0.3ミリと補助線の0.1ミリとが画面上でも区別が付きます。
当たり前に機能に思えるかもしれませんが、これはMac系CAD特有の機能です。
ふつうのCADはディスプレイ上で線幅を表現するようになっていません。
これは決して印刷・表示機能が劣ってそうなってるわけではありません。
ちなみにVectorWorksでさえも、デフォルトでは線幅を表現しないほうの設定になっているのです。
なぜかと言えば、WYSIWYGがじゃまだからです。

なんども繰り返すようですが、図面出力はCADにとってはオプションのひとつに過ぎません。
CADでは印刷機能よりも操作・設計機能を優先させなければならないのです。

仮に図面どおり忠実に0.3ミリ線幅を表現したとしましょう、1000倍に拡大したら30cmです。
これでは画面が線で真っ黒に覆われてしまい、基準点が地形線に隠れてしまいます。
原寸作図でも事例を紹介したように、CADでは100倍や1000倍くらいはいつも拡大表示させます。
1/500平面図では0.3ミリの極細線かもしれませんが、原寸表示させたら15cmセンターラインなのです。
紙の図面を顕微鏡で拡大するようなWYSIWYG機能は設計の邪魔でしかありません。

線とは長さのあって幅のないモノ。
いくら拡大しても極細線で表示されなければなりません。
CADでは幾何学そのものの定義どおりに運用しないと
コンピュータ本来のの力を発揮させることはできまないのです。

なお、VectorWorksだけが印刷機能を強化しているのにはMac系CADという生い立ちが関係しています。
Macはイラスト・クリエーター系に重点をおいたOSなので
そのCADプログラムも自然WYSIWYG寄りになっているのです。
線幅のほかにもフォント色、線色、面色など配色がイラストソフトと同じようにカスタマイズできます。
CADにとってはお飾りがたくさんくっついたフリフリのソフトといえるでしょう。

【広義のWYSIWYG】

ディスプレイで見えるようにゲットされるとは、
広く言うとCAD空間で起こることは現場でも起こるということです。

CAD画面上で既設工区と施工工区の中心点が延長方向に15ミリずれてしまっているとしたら
現実に15ミリずれて施工してしまったということになります。
まだ着工していないのであれば、CADデータをいじってセンターをあわせます。
この場合おそらく既設工区のセンターに合わせることになるのですが、
そうすると施工工区のセンターはいつまでもNo.23+0.015という
端数位置データを持つことになります。

こういうときのCADは融通がききません。
みっともないので表現上はブレーキ(調整しろ)をいれてNo.23と表示させますが、
センター点が精密にはNo.23の位置にいないことは
データパレットのXY座標値を表示させてみれば明らかです。

おなじような例として鉄筋量の多い床版橋の鈍角部の配筋詳細図を考えてみます。
鉄筋幅を考慮した配筋図に真っ黒になるほどに鉄筋が描画されていたら、
現場でもコンクリートが回り込まないほどびっしり鉄筋で埋まっていているということです。
こうなるとカブリなどはほとんど期待できません。
それでもまがりなりに橋が仕上がっているのは、現場でピッチを調整して
なんどか打設間隙を作っているからにほかなりません。
でもこれではCADデータ(発注図面)どおりには施工されていないんですよね。

図面は楽譜ですから演奏者による適当なアドリブが許容されうるのですが、
CADデータはCDレコードだから完璧に現場と一致されることを要求されるのです。
CADでは町村区画ほどの造成計画でもミクロン単位まで精密に管理できるデータ構造になっているので、
ほんとごまかし(融通)がきかなくてこまります。