アマゾン探検記のなかにインディオの女性が渡河中に船からコップを落として大変悲しんだという話がありました
乗り合わせていた日本人スタッフがなだめるのですが、なかなか聞き入れてはくれなかったそうです。
プラスチックのコップなどもっと良いものあるからとか、いや同じものでもいいからとか、あとでいくらでも買ってやるとかいろいろ説得したそうですが、泣きやむことはなかったといいます
そんな安物のコップに何故それほど執着するのか隊員は理解できなかったということですが、自分にはなんとなくその喪失感が分かるような記がしました
そのコップはすでにその女性の一部になっていたのです
身体の一部が流れてしまったから悲しむのです
靴は買ってきたとき足指がつかえても、履いているうちに馴れてくるものです
これは、靴が変形して自分の足形に合ってくるためと普通考えられていますが、実は人の足も靴の形に合わせて足形が変わってくるのではないでしょうか
足形だけでなく、歩き方も靴に合わせて変わってくる
また靴によっては臓器にまで影響を与える
靴が衣料品として特別な位置を占めているのは、それが身体の一部になりうるからだと思います
突拍子もない話になりますが、公共物、たとえば川を渡る人が足下の橋を「大きな板張り廊下」のように意識するには、江戸時代の木造橋のようなソフトな荷重設計にする必要があります
床が歩行者の動きに応じてかすかにきしむ
いまでも横断歩道橋はたいそう揺れるものがありますが、これは「軋み」というより桁の共振振動が主になっていて、あまり気持ちの良い構造とはいえません